クラ・うら・俱楽部~メンデルスゾーンはなにゆえ洗練されているのか⑧

メンデルスゾーン《スコットランド》連載も最終回となりました。今回は第4楽章の続き、そして感動のコーダについて顕微鏡で覗いてみます。画像多めでお送り致します!

メンデルスゾーン節とは

よくメンデルスゾーンは癖がない、あっさりとしていると言われますが、実はそう見えるところに彼の個性があるのでしょう。例えば、彼がよく用いる書き方の1つ、高い音→低い音への急降下。こういった音と音の変化をダイレクトに感じさせるところに筆者は”メンデルスゾーン節”を感じます。急降下によってまるで大きなアクセントのように聴こえる。そのために他のものは一切捨てているといっても過言ではないほどです。音そのものを聴かせているのかもしれません。

付点のリズムに3連符と盛りだくさんのシーン!

このへんは、オクターブと付点のリズムとの双方でアクセント効果が増幅していますね。アクセントの記号がなくても自然と音と音の間を強調して演奏します。

感動のコーダ

そしてとうとう辿り着きました。種を育てる長い旅のエンディング。このコーダが、ヴィオラから始まることに感動を禁じえません。第1楽章冒頭を彷彿とさせるようです。しかもイ短調がイ長調となって帰って参りました。

第1楽章冒頭。この旅はヴィオラから始まりました。

コーダの冒頭、下から3段目がヴィオラです。付点のリズムも健在です!ヴィオラが奏でる付点に赤い点をつけてみました。

管楽器もみな同じテーマを奏でるとは、なんと感動的なシーンでしょうか。

そして、半音……!長調になったことで半音が全音へと変身しました!まるでサナギから蝶へ変身したかのようでお見事。輝かしいその胸には立派な装飾音符をひらひらとさせています。装飾音符というのは大事な音にしか付けないもの。これは全音を聴かせるための旅でもあったのです。

赤丸が装飾音符。堂々たる栄光の証です。

ここまでして大切に描かれた付点のリズム、半音、そして育て上げられた全音とは何か?

それは、音楽の源そのものだと思います。

自分の個性や音楽性というよりも音そのものの性質を表すことにその才能を賭けたメンデルスゾーン。表すために他の要素を徹底的に排除しているのがむしろメンデルスゾーン節、どこをとってもきちんと音楽の種が聴こえるというのは凄いこと。

そうして迎えたエンディング、最後の最後も付点のリズムで終わります。

赤丸で囲んだのが付点のリズム。この徹底ぶりが芸術たるゆえんです。

洗練されている理由

至善と書いてしぜんと読む言葉があるそうですが、この曲は正に自然=至善であるという彼の美学が貫かれるいるような気が致します。音は音そのものが素晴らしい。個人の考えや好みを超越した豊かさ。それを描くために徹底して排除した他のもの。余談ですが、筆者も幼少の頃より音楽以外のことをかなり排除することが身についています。捨てるときには辛いものの、いつしかヴァイオリンのために他の物事を捨てていくことが快感となっているような。メンデルスゾーンとは比較すべくもありませんが、芸術のために排除するという姿勢は共感できるのです。捨てないと本物は得られない。そうまでして得られた音だから”洗練”という表現をまとうことができるのかもしれません。ここまで駆け足で来ましたが、メンデルスゾーンが表したかったものを少しでもお伝えできていれば幸いです。ご感想もお待ちしております。お問い合わせページからぜひお寄せくださいませ。

楽譜出典
Felix Mendelssohn, Symphony No. 3 “Scottish”(IMSLP)
※記事中の楽譜画像は解説のため一部を抜粋し、筆者が加工しています。

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