クラ・うら・俱楽部~メンデルスゾーンはなにゆえ洗練されているのか⑥

メンデルスゾーン『スコットランド』。いよいよ終盤に差し掛かって参りました。美しさの極致のようなこの楽章は”種”がアラベスクのように絡みながら実っていきます。そのさまをお伝えする楽譜画像と音源は少々複雑ですが、筆者なりに分かりやすい形にしてみましたのでどうぞお付き合いくださいませ。楽譜は絵画のようにイメージで感じて頂ければ幸いです。

前回もご紹介した3楽章冒頭。音源で赤丸を筆者のヴァイオリン、青丸はPCソフトのピアノで演奏してみました。どちらもこのあと大樹のように大きく育っていきますが、赤丸は付点のリズムに加えて半音が印象的です。

赤丸と青丸、どちらも1楽章からまかれている付点のリズムの種です。

このあと出てくるこの楽章のテーマ。とても美しいなだらかな旋律です。さり気なく付点のリズムもいます。

ここの伴奏は実際には弦楽器群によるピチカートです。このリズムは16分音符ですが、これがこののち大変身を遂げます。

種が大樹へと実っていく

この楽章は1つめの画像にある赤丸と青丸の動き、そしてテーマが絡み合いながらどんどん大きくなっていきますが、この2つの丸がまず変貌するのがこの部分からです。楽譜でいうと63小節目あたりから。

この部分の楽譜画像です。赤丸と青丸に加えて、1楽章からその片鱗を見せている、2拍子と3拍子の性格がここでは16分音符4つと6連符に姿を変えて現れています。とても複雑なので画像を分けてご紹介いたします。

赤い矢印は赤丸が旋律となっていく様子。オレンジは6連符です。テーマのときには16分音符だったピチカートが6連符になることで気持ちもざわめいていくのです。

青丸がどんどん膨らんで、囲めなくなってしまいました。そして6連符もその存在感を増していきます。

フレーズが終わったあとも付点のリズムと6連符は姿を消しません。それどころか、この物語の主役のように紡いでいきます。

1楽章で2拍子と3拍子の性格についてお伝えしましたが、この楽章ではそれをリズムに置き換えて表されています。

16分音符4つが2拍子のもつ性格。6連符は3連符2つと考えて3拍子の性格。この2つの性格と付点のリズム、そして半音の使い方がこの曲全体にまかれた種であり、それは終楽章に向けて大きく実っていくのです。それはあたかも植物が季節の恵みや自然の厳しさを経験して初めて豊かに実る様のようでもあります。

ではこれらにテーマがどのように関わっているかというと、次のチェロの部分をお聴きください。ヴァイオリンで弾ける音域だったため筆者が演奏しています。

チェロっぽい音色と歌い方になるように弾き方を工夫してみました。

オレンジ色で6と記しているのは6連符(3拍子の性格)、4は16分音符4つ(2拍子の性格)です。

あの美しいテーマに2拍子と3拍子の性格のどちらも絡めるとは、まるでとてつもないアラベスク文様を目の当たりにしているようです。

ところで、筆者の経験ではこういった場面の旋律は伴奏を聴きすぎないほうが上手くいくようです。というのは同じ場所に2拍子も3拍子もいるとどちらに合わせたらいいのか分からなくなってしまうから。正確に弾くことだけが正しいわけではない、割り切れないままでいい、ままがいい。

しかしメンズデザインは割り切れない音楽をも最後には見事にスパーン!と割ってしまうようです。その4楽章については次回お届けいたします。ご感想もお待ちしております。お問い合わせページからぜひお寄せくださいませ。

楽譜出典
Felix Mendelssohn, Symphony No. 3 “Scottish”IMSLP
※記事中の楽譜画像は解説のため一部を抜粋し、筆者が加工しています。

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