メンデルスゾーン

クラ・うら・俱楽部~メンデルスゾーンはなにゆえ洗練されているのか⑦

お待たせしました。メンデルスゾーン『スコットランド』とうとう第4楽章です。メンデルスゾーンがこの作品で表現したものとは。今まで撒かれた種たちがまるで映画の登場人物かのように大活躍するこの楽章、その大立ち回りを音源と楽譜画像でお伝えします。楽譜は音符を読むというより絵画のように印象を感じて頂ければ幸いです。

改めて登場人物の紹介

まずは、付点のリズム。第1楽章のヴィオラのテーマも彼でした。何かと目立つ存在ですね。以下”付点”と省略します。

ヴァイオリン群が放つテーマは正に付点の嵐です。

ちなみに冒頭の16分音符は付点の鋭さを表したもの。自らの姿は現さずに性格だけは登場させるとは、できるヤツです。この部分を筆者のヴァイオリンとPCソフトのピアノで演奏してみました。

そして3連符。この人は音楽を不安定にさせたりフワフワガサガサ、いわゆる”雰囲気”を作り出すのが大得意です。

第1Vnの楽譜です。4段目後半から3連符がまるで主役のように出てきます。数字で3と書かれています。

それとなんといっても半音!

臨時記号で#が記されている箇所は全て半音。何度も顔を出す重要人物です。しかも付点と絡みながら出てくるなんて印象を残す天才です。

この曲が短調で書かれているのは半音を駆使したかったからではないか、と推測します。

第4の登場人物

そして、影に隠れながらも大きく存在感を示す4分音符。

4分音符というのは、まるで空気のような人物。いるかいないか普段はあまり気になりません。ですが4分音符がいることで付点の鋭さが目立ち、3連符の不安定な立ち位置が際立つ、絶妙な引き立て役として登場しています。画像1枚目のテーマでは伴奏、そして後半ではメロディ役として見事な一人二役を演じきっています。音源1つ目14秒目~の4分音符といったら、このように格好いい4分音符は滅多にいない(惚れそう)。

さて、ここで第1楽章を振り返ってみましょう。テーマは付点から始まるものでした。そしてこの『スコットランド』は2拍子と3拍子という相反するリズム同士の物語だったのです。それは朝と夜、白と黒……というような真逆でもありグラデーションも併せ持つ関係性。この2人はどちらが主役というのではなくどちらもメインキャラクターです。そこに独自のキャラクターを発揮し続ける付点。どちらにもぶれない強さ、それこそが鋭く感じられるのかもしれません。第2楽章では一旦大人しくなった彼らですが、第3楽章では雄大なその姿を表しました。

この4人の人物たちが激しく立ち回った先に行きつくコーダとは。次回とうとう『スコットランド』最終回にてお届けします!ご感想もお待ちしております。お問い合わせページからぜひお寄せくださいませ。

楽譜出典
Felix Mendelssohn, Symphony No. 3 “Scottish”IMSLP
※記事中の楽譜画像は解説のため一部を抜粋し、筆者が加工しています。

芸術を日常に取り入れるライフスタイルブランド「VERSA」。

クラシック音楽をモチーフにした「クラシック黒」シリーズはこちらからご覧いただけます。

前回までの記事一覧

クラ・うら・俱楽部~メンデルスゾーンはなにゆえ洗練されているのか⑥

メンデルスゾーン『スコットランド』。いよいよ終盤に差し掛かって参りました。美しさの極致のようなこの楽章は”種”がアラベスクのように絡みながら実っていきます。そのさまをお伝えする楽譜画像と音源は少々複雑ですが、筆者なりに分かりやすい形にしてみましたのでどうぞお付き合いくださいませ。楽譜は絵画のようにイメージで感じて頂ければ幸いです。

前回もご紹介した3楽章冒頭。音源で赤丸を筆者のヴァイオリン、青丸はPCソフトのピアノで演奏してみました。どちらもこのあと大樹のように大きく育っていきますが、赤丸は付点のリズムに加えて半音が印象的です。

赤丸と青丸、どちらも1楽章からまかれている付点のリズムの種です。

このあと出てくるこの楽章のテーマ。とても美しいなだらかな旋律です。さり気なく付点のリズムもいます。

ここの伴奏は実際には弦楽器群によるピチカートです。このリズムは16分音符ですが、これがこののち大変身を遂げます。

種が大樹へと実っていく

この楽章は1つめの画像にある赤丸と青丸の動き、そしてテーマが絡み合いながらどんどん大きくなっていきますが、この2つの丸がまず変貌するのがこの部分からです。楽譜でいうと63小節目あたりから。

この部分の楽譜画像です。赤丸と青丸に加えて、1楽章からその片鱗を見せている、2拍子と3拍子の性格がここでは16分音符4つと6連符に姿を変えて現れています。とても複雑なので画像を分けてご紹介いたします。

赤い矢印は赤丸が旋律となっていく様子。オレンジは6連符です。テーマのときには16分音符だったピチカートが6連符になることで気持ちもざわめいていくのです。

青丸がどんどん膨らんで、囲めなくなってしまいました。そして6連符もその存在感を増していきます。

フレーズが終わったあとも付点のリズムと6連符は姿を消しません。それどころか、この物語の主役のように紡いでいきます。

1楽章で2拍子と3拍子の性格についてお伝えしましたが、この楽章ではそれをリズムに置き換えて表されています。

16分音符4つが2拍子のもつ性格。6連符は3連符2つと考えて3拍子の性格。この2つの性格と付点のリズム、そして半音の使い方がこの曲全体にまかれた種であり、それは終楽章に向けて大きく実っていくのです。それはあたかも植物が季節の恵みや自然の厳しさを経験して初めて豊かに実る様のようでもあります。

ではこれらにテーマがどのように関わっているかというと、次のチェロの部分をお聴きください。ヴァイオリンで弾ける音域だったため筆者が演奏しています。

チェロっぽい音色と歌い方になるように弾き方を工夫してみました。

オレンジ色で6と記しているのは6連符(3拍子の性格)、4は16分音符4つ(2拍子の性格)です。

あの美しいテーマに2拍子と3拍子の性格のどちらも絡めるとは、まるでとてつもないアラベスク文様を目の当たりにしているようです。

ところで、筆者の経験ではこういった場面の旋律は伴奏を聴きすぎないほうが上手くいくようです。というのは同じ場所に2拍子も3拍子もいるとどちらに合わせたらいいのか分からなくなってしまうから。正確に弾くことだけが正しいわけではない、割り切れないままでいい、ままがいい。

しかしメンズデザインは割り切れない音楽をも最後には見事にスパーン!と割ってしまうようです。その4楽章については次回お届けいたします。ご感想もお待ちしております。お問い合わせページからぜひお寄せくださいませ。

楽譜出典
Felix Mendelssohn, Symphony No. 3 “Scottish”IMSLP
※記事中の楽譜画像は解説のため一部を抜粋し、筆者が加工しています。

芸術を日常に取り入れるライフスタイルブランド「VERSA」。

クラシック音楽をモチーフにした「クラシック黒」シリーズはこちらからご覧いただけます。

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クラ・うら・俱楽部~メンデルスゾーンはなにゆえ洗練されているのか⑤

メンデルスゾーン『スコットランド』連載も5回目となりました。メンデルスゾーン《スコットランド》連載も5回目となりました。ここからはいよいよ後半、3・4楽章へ入っていきます。しかし、この曲は前へ進むために、常に過去を振り返らなければいけない、過去と未来が、同じ一粒の種から育っている作品なのです。

そこで、今回はまず彼の音楽を支えていたであろう絵画作品をご覧ください。風景画が特に有名で検索すると多くの作品が出てきます。その中から筆者が紹介したいのは白黒を基調としたスケッチ作品です。以下のサイトに、彼のスコットランド旅行中のスケッチが紹介されています。

https://www.mendelssohninscotland.com/mendelssohn-artist

これらの作品を見ていて筆者が感じたことは、この細かい筆致、特に山々の木々の葉や草、岩肌などを表す細かな筆致が彼の16分音符のようだということです。この16分音符たちは私たちが見ることができる自然界の恐らく最も小さな単位であり、世の中を形作る根源でもある。それが彼の音楽のベースとなっているような気がするのです。そして、彼にとっての洗練されたものとはまさにこの自然そのものだったのではないでしょうか。

さて、それを音楽に置き換えてみましょう。この曲全楽章においてとても重要な役割を担っている16分音符、その姿は主に付点のリズムで表れています。その活躍ぶりと言ったらまるで『真夏の夜の夢』のあの妖精パックのよう!目立つところにいるのはもちろん、気がつかない裏側にもいつの間にか潜んでいます。付点と言えば、1楽章の冒頭も付点で始まったことは覚えておいででしょうか(ぜひ1楽章記事をご参照ください)。

赤丸が付点のリズム。このリズムがないとなんと凡庸な音楽になることでしょう。

楽譜画像はイメージとしてご覧頂ければ幸いです。また、音源は筆者のヴァイオリンとPCソフトのピアノによる演奏です。

さて、以下の画像は3楽章に出てくる付点の種たちです。メインテーマが始まる前、青い丸はサブテーマとなり赤い丸は付点でもあり実は1楽章から顔を出す名脇役でもあります。それぞれ大樹のように育っていきます。前回からご紹介しているパーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団のYouTubeで20:51あたりからです。(下部に載せております。)

3楽章冒頭部分。メロディが始まる前奏のようなところです。赤丸は1st Vn、青丸は下からホルン、ファゴット、クラリネットが奏でます。

この名脇役、1楽章での活躍シーンはこちらでした(この件はこちらをご参照ください)。

このシーンの終わりが半音!この半音のニュアンスが彼の仕事です。

この付点のリズムを種として撒いておき、楽章を通して少しずつ大樹として育て上げるのがメンデルスゾーン流。この育ち方に次回も注目してお届けいたします。ご感想もお待ちしております。お問い合わせページからぜひお寄せくださいませ。

楽譜出典
Felix Mendelssohn, Symphony No. 3 “Scottish”IMSLP
※記事中の楽譜画像は解説のため一部を抜粋し、筆者が加工しています。

芸術を日常に取り入れるライフスタイルブランド「VERSA」。

クラシック音楽をモチーフにした「クラシック黒」シリーズはこちらからご覧いただけます。

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