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現場舞台袖ヒリヒリ百景②

~モーツァルトの場合~

皆様、クラシック演奏家の「現場事情」はご存知でしょうか。いつもサラッと弾いているかのように見えるプロの現場で行われていること……。ここでは、プロでないとなかなか感じられない現場での都合や不都合についてお伝えしていきます。

モーツァルト。オーケストラや合奏では非常に演奏する機会が多い作曲家です。定番のアイネ・クライネ・ナハトムジークはもちろん、歌劇『フィガロの結婚』の序曲や交響曲の数々、ソリストを迎えた協奏曲も有名な作品が多いですね。

さて、そんなモーツァルトですが実はヴァイオリニストにとっては「関門」でもあるのです。

というのは、

プロオーケストラの入団試験に使われるからです。

プロオーケストラの入団試験では、協奏曲とオーケストラ曲の一部(オーケストラスタディと呼びます。略してオケスタ)を弾くのですが、この協奏曲にもオケスタにもモーツァルトが指定されることがとても多いのです。審査する側の団員さん方からすると「モーツァルトを聴けばどういう演奏をする人なのかよく分かる。」だとか。ちなみに、よく使われるオケスタは交響曲第39番4楽章です。

なので、よく演奏する作品であっても私なんかは怖くなってしまうのですね。

客席にプロオーケストラの団員さんがいるわけではないのですが、審査されるような気分になりそうです。

なので、モーツァルトを演奏するとなったらしばらく時間をかけて弾き方を「調整」します。というのは、モーツァルトの作風はとってもシンプルで無駄がないぶん、ちょっとした演奏上の粗も目立ちやすいですし、そもそも繊細で透明感のある音色でないと。となると、普段の弾き方から変えていくことになります。他の作曲家の作品を荒っぽく弾いているわけではありませんが、チャイコフスキーのようなねっとりとしたロシアの雰囲気や情熱の薫り高いスペインの雰囲気とはまるで違う、極上のコンソメスープのような一品を目指すわけですから。(ボルシチも生ハムも好きです。)

具体的には弓の圧力を軽めに、最初のアタックからの響きを重視して滑舌良くいきたいところです。そして、あの軽やかな雰囲気を演出するリズム!どうやったらこの指がそのように動いてくれるのか、いつも悩みどころです。

そんな私が一番好きなモーツァルトのジャンルはピアノ協奏曲です。この人のピアノ協奏曲は、他の作曲家のそれとはまるで違う、独自の構成を持っているなぁと不思議で仕方ありません。もしかしたら、モーツァルトのピアノのような音色を出したいから好きなのかもしれません。だとすると永遠に手に入らない憧れの音色なのかな。なんとか手に入れたいものです。

 

 

現場舞台袖ヒリヒリ百景①

~G線上のアリアの場合~

皆様、クラシック演奏家の「現場事情」はご存知でしょうか。いつもサラッと弾いているかのように見えるプロの現場で行われていること……。ここでは、プロでないとなかなか感じられない現場での都合や不都合についてお伝えしていきます。

さて、今回は先日ユアオーケストラで演奏したバッハ作曲管弦楽組曲第3番よりエア(通称G線上のアリア)についてです。

この曲は2つの面で有名で、一つはバッハが書いた原曲である合奏曲。そしてもう一つは19世紀のヴァイオリニスト、ウィルヘルミという人が編曲したヴァイオリン独奏のための曲です。(独奏といいますが実際にはピアノ伴奏がつきます。)バッハが書いた合奏曲が大変美しく素晴らしかったためウィルヘルミが独奏用に編曲したのでしょうが、実は編曲の際に次のようなことが施されました。

  • 調性をニ長調からハ長調に変更
  • ヴァイオリンの一番低いG線一本のみで演奏

これによりとても良い編曲となり、この曲は「G線上のアリア」として広く知られるようになりました。このタイトルもいいですよね。

で、これをヴァイオリニストから眺めてみると。

私が一番気を付けたいのは、音程の取り方です。

独奏の場合、私は自分の音色が際立つようにそれぞれの音程をその音の雰囲気に合わせて取りますが、合奏の場合は溶け込まないといけません。ただでさえ、数多く演奏してきている独奏版での音程が無意識のうちに合奏でも出てきてしまいます。そうすると、合奏としてはうまく合わない。

なので、弾きこんでいる曲であればあるほど、事前に音程をしっかり「調整」する必要があり、これがなかなか大変でもあるのです。もっと上手いプレイヤーの方々はそんなことないのかもしれませんが、不器用な私はそうではなく、一度身に付いたものを変えることは難しいのです。

ちなみに、音の雰囲気に合わせて音程を取るというのは、言葉にすると「広めに取ったり狭く取ったり」となります。音程の間隔を広めにすると豊潤な雰囲気に聴こえたり、あるいは狭くすると内向的な切ない雰囲気が表現できたりするようで……。音程というものは擦弦楽器奏者にとっては永遠のテーマですね。

またこの曲を演奏する機会があったら、どちらの形においても「良い音」を目指したいものです。

お客様の声

2021年1月23日に開催したユアオーケストラコンサートの指揮体験コーナーにご参加下さった二人のお客様のご感想と演奏シーンをご紹介致します。

2021年1月23日、広尾サロンでのYour Orchestraスタートアップコンサートに「参加」させていただきました。指揮もできるということで、少し勇んで足を運びました。実は、この日、別のコンサートを聴く予定だったのですが、ご縁を感じそちらをキャンセルして伺った次第です。 会場に着くとたちまち、9人の皆さんが奏でる豊饒な響きに心を奪われてしまいました。コロナ禍で、クラシックファンはコンサートホールに行けない「飢え渇き」があったため、生音を聴くことのよさを再認識していることと思います。つまりは、何かのコピーではなく、一回限りの芸術体験ということですね。今回、私はまさに「快」の体験をさせていただきました。 指揮のほうはご指摘のあったとおり、曲が進むにつれてテンポが遅くなってしまったようです(アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク第1楽章)。音こそ出しませんが、指揮はまさに「演奏」だと思い知りました。 このような試みのコンサートはユニークで有意義だと思いますので、これからもぜひお続けください。今日はありがとうございました。~

~本日は図らずも、J. S. BACH の不朽の名作で弦楽オーケストラの指揮初演の経験を賜り誠にありがとうございました。私は中学高校で吹奏楽を経験しており、上級生の時に指揮をやっておりましたが、その経験以来数十年ぶりの指揮でございました。事前にカラヤンのYoutubeで予習していましたが、フルコースはABABの形式でして、本日はA部分だけでしたが十分堪能させていただきました。この音楽は人生の最終局面での達観した雰囲気を持っていると思いますが、走馬灯の様に思いを巡らした後の静けさの処理がポイントでしょうか。最後に対旋律も無く最終音の簡素な和音をいかに静かに美しく終わらせる事が出来るかどうかが重要だと思っております。是非素晴らしい作品を世の中に普及させましょう。~

ユア・オーケストラ主催イベント 感染対策について

ユア・オーケストラ主催イベントでは新型コロナウィルス感染症への対策を以下のように行います。

 

①会場内でのマスク着用厳守。出演者も演奏時においてもマスクを着用し演奏致します。

②ソーシャルディスタンスと入場制限の徹底。客席の間隔は1席ずつ空けて設置致します。定員30名を最大15名までのお客様人数と致します。

③検温、手指消毒の実施。ご入場の際に37.5℃以上の熱がある場合はご入場頂けません。

④完全予約制、お名前名簿の保管。終演後2週間、ご来場の方々の名簿を保管致します。

⑤会場には、医療機関にも導入されている空気清浄機Airdogが設置されています。ウイルスよりも小さな0.0146μmの微細粒子まで除去が可能ということです。

 

また、緊急事態宣言中のクラシック音楽コンサート開催について、文化庁長官よりメッセージが発表されております。感染のリスクが少ないとのことです。よろしければご一読ください。「文化芸術に関わる全ての皆様へ」

 

2021/1/23 ユア・オーケストラ解禁!

 

今までにない「あなたのためのオーケストラ」としてユア・オーケストラは2021/1/23にその姿が解禁されます。音楽愛好家の方による指揮と演奏がどのようになるか、ぜひその目と耳でお確かめください。

 

曲目:モーツァルト/アイネ・クライネ・ナハトムジーク全楽章  

   バッハ/管弦楽組曲第3番より「エア」      

 

今回は、リハーサルも公開しています。メンバーだけで行うリハーサルの時間帯には指揮体験も可能です。

 

メンバーリハーサル 13:00~  愛好家の方リハーサル 14:00~ 本番 15:00~

完全予約制、入場無料(途中での入退場可)

会場:広尾サロン 東京都渋谷区広尾5-12-3

指揮:音楽愛好家の方

演奏:ユア・オーケストラ

Vn アイティ I.T Violin 大杉那々子 張大赫 三原愛里 三宅政弘  

Vla 東義直 米納真妃子

Vc 藤塚紗也香

Cb  井上美冬

 

実は、この日に向けて初回の指揮者である音楽愛好家の方と、当オーケストラコンサートミストレスとでマンツーマンでの勉強会を積み重ねているところです。ピアノがあるスタジオで、ピアノや歌、ヴァイオリン演奏でご一緒に勉強して頂いています。演奏家たちはみなプロですから、指揮が思うように振ってくれなくても弾くことはできます。ですが、ユア・オーケストラはあくまで「その方の音楽」に忠実でありたく、振り方のちょっとした癖や雰囲気なども踏まえて事前に打ち合わせておくことで、いざオーケストラを前にしたときによりスムーズに良い音を出せると思っているからです。

※当日の感染対策についてはこちらをご覧ください。