ヴィヴァルディ 合奏協奏曲「四季」
ヴィヴァルディは、17世紀イタリアで活躍したヴァイオリニストで孤児院の先生でした。数百曲を超えるヴァイオリン曲を残しており、それは孤児院の女の子たちが音楽で生計を立てられるようにと教育目的のため一人一人に合わせて作曲されました。今回演奏する「四季」の他、ヴァイオリン習得者が練習する協奏曲などで知られています。「四季」はその名の通り、春夏秋冬をテーマとした4つの作品から成ります。それぞれ、最初の部分は急速で、真ん中の部分はゆったりと流れ、最後はまた急速に終わります。今回の「四季」には詩がついているのでご紹介します。なお、詩の作者は明らかになっていません。
春
春がやってきた、小鳥は喜び囀りながら祝っている。小川のせせらぎ、風が優しく撫でる。春を告げる雷が轟音を立て黒い雲が空を覆う、そして嵐は去り小鳥は素晴らしい声で歌う。
牧草地に花は咲き乱れ、空に伸びた枝の茂った葉はガサガサ音を立てる。羊飼は眠り、忠実な猟犬は(私の)そばにいる。
陽気なバグパイプにニンフと羊飼いが明るい春の空の下で踊る。
夏
かんかんと照りつける太陽の絶え間ない暑さで人と羊の群れはぐったりしている。松の木も燃えそうに熱い。カッコウの声が聞こえる。そしてキジバトの囀りが聞える。北風がそよ風を突然脇へ追い払う。やって来る嵐が怖くて慄く。
稲妻と雷鳴の轟きで眠るどころではない、ブヨやハエが周りにすさまじくブンブン音を立てる。
嗚呼、彼の心配は現実となってしまった。上空の雷鳴と雹(ひょう)が誇らしげに伸びている穀物を打ち倒した。
秋
小作農のダンスと歌小作農たちが収穫が無事に終わり大騒ぎ。ブドウ酒が惜しげなく注がれる。彼らは、ほっとして眠りに落ちる。
大騒ぎは次第に弱まり、酒はすべての者を無意識のうちに眠りに誘う。
夜明けに、狩猟者が狩猟の準備の為にホルンを携え、犬を従える。獲物は彼らが追跡している間逃げる。やがて傷つき獲物は犬と奮闘して息絶える。
冬
寒さの中で身震いしている。足の冷たさを振り解くために歩き回る。辛さから歯が鳴る。
外は大雨が降っている、中で暖炉で満足そうに休息。
ゆっくりしたテンポで平和な時間が流れる。
私たちはゆっくりと用心深く、つまづいて倒れないようにして氷の上を歩く。しかし突然、滑って氷に叩きつけられた。氷が裂けて割れ、頑丈なドアから出ると外はシロッコと北風がビュービューと吹いていく。そんな冬であるが、もうすぐ楽しい春がやってくる。
モーツァルト 交響曲第1番
言わずと知れた大天才、モーツァルトによるこの作品は1764年頃、彼がわずか8歳の頃に作曲されました。神童モーツァルトの名が知れ渡ってきていましたがまだ作曲は始めたばかりという時期です。急速な第1楽章、突如ゆったりとした第2楽章、また明るい第3楽章の三つで成り立っています。この作品で用いられている変ホ長調は、その後大人になってからの傑作の一つ交響曲第39番と同じ、その調の響きを幼い頃に持っていたということに驚かされます。
シューベルト 交響曲第5番
シューベルトといえば「未完成」。「未完成」という不安定な言葉がそのまま当てはまるような生涯を送った人でした。それでも実際は男女問わずモテモテで、現代に語り継がれる悲哀なエピソードは当時のウィーン社会としてはさほど悲哀でもなかったのだとか。何しろ、孫子三代にわたるまで借金を残すのが普通だったとも言われる時代背景です。平均寿命も現代より遥かに短く、医学も恐ろしく進んでいませんでした。何を持ってして彼を不幸だと言っていいのか分からなくなりますが、この交響曲はとにかく幸せな表現に包まれ、1816年彼が19歳のときに書いたということからこの人も本当に天才だなぁと思います。なお、モーツァルトのライバル(?)として名が残っているサリエリに師事していました。この作品は4つの部分から成り立ち、急速で希望に満ちたような第1楽章、しっとりと歌い上げる第2楽章には「未完成」を彷彿とさせるような陰りも見え隠れしています。第3楽章には強靭さが表され、最後は愉快な気分の第4楽章でしめられ、終わりとなります。