モーツァルト

クラ・うら・俱楽部~アイネ・クライネ・ナハトムジークはなにゆえ愛されているのか②

アイネ・クライネ・ナハトムジークが愛される理由。今回は弦楽器の響きの面からお伝えします。ドレミや調性の話しですが「ふーん、そうなのね」と思って頂ければ幸いです(前回の記事はこちら)。

まず、ヴァイオリンがよく響く調として知られているニ長調。その音階はドレミでいうと”レミファソラシドレ”です。で、この曲はト長調”ソラシドレミファソ”で書かれていて、ヴァイオリンではト長調も非常によく響きます。この響く、というのはどういうことかというと、言葉ではちょっと分かりにくいため図解をご参照ください。

楽器の特性を活かした響き

ヴァイオリンの開放弦の音です。

※〇印が個性的なのは筆者のPCスキルによるものです。ヴァイオリンと違ってなかなか上達しません。

これは、ト長調の音階の中でヴァイオリンの開放弦の音に印をつけたものです。赤で囲んでいる音が開放弦の音。基本的に、開放弦の音はどの高さでも鳴りやすい。ソならどの高さのソでも開放弦が共鳴しやすいのですね。弦が共鳴するということは楽器のボディも同じように鳴り、響きが増幅します。しかも一番低い開放弦のソの音をバンバン使えるので音域も楽に広がり、弾きやすいのです。

この音階に和音の役割を加えてみました。

※アルファベットはトニック・ドミナント・サブドミナントの頭文字です。

音楽の文法はT→D→T、T→S→T、盛り上げたいときにはT→S→D→Tが基本です。ここでいうとソ→レ→ソというのが基本中の基本の文法なのですが、この曲冒頭の楽譜を見てみると、見事にT→D→Tとなっていることが分かります。(楽譜画像は見た目の印象を感じて頂ければ幸いです。)

10小節目はTであるソの和音で終わっています。11小節目はヴァイオリン2部でレ→ミ、シ→ドの旋律ですが、根音省略といってソの音が省かれている形です。省くことで軽やかな響きになるためよく使われる手法です。

ニ長調はお出かけの時間

ところで、ヴァイオリンがよく響く調はまずニ長調でした。このト長調の中でニ長調がどう関係があるかというと、Dの和音はニ長調の主の和音なのですね。音楽の文法で、TからDにいくとそのままDでしばらく遊んでいることがあります。お外に遊びに出かけるようなものですね。あれ?お出かけするってとても楽しい、この楽しさを満喫しよう!人生のメイン目的はお外で遊ぶことにある!そして最後帰ってきて良かった良かった、今日もお布団入ってよく寝ましょ、というのが基本的な作りです。晴れもあれば曇りの瞬間もある、このお外で遊んでいる時間がよく響くのは良いことですね。

先の部分のスコアです。左ページ2段目あたりからニ長調へと移り変わっています。

では、ヴィオラ・チェロはどうなのか。

ヴィオラとチェロの開放弦の音です。

全部、ト長調の中にある音です。このドの音はト長調におけるSでした。これはハ長調の主の音でもあります。

ハ長調の音階にヴィオラ・チェロの開放弦の音を印をつけたのが以下の図です。

ニ長調がお外で遊ぶことだとしたら、ハ長調はお出かけ前の準備でしょうか。ワクワクする感じ。この曲ではこの準備の時間はわりあいサラッと通りすぎてしまいますが、気持ちとしてはワクワク感は変わりません。こういったところで響きやすいことも人を選ばないという感じがします。テーマはこの上なく分かりやすく良い音が出やすいとはなんて素晴らしいことなんだ……!

ちなみに、この曲はヴァイオリン・ヴィオラ・チェロの弦楽四重奏での演奏も多いのですが、コントラバスが加わるときは調による影響というより空気そのものが濃く振動してくる感じがします。その濃さはまるで秋の山の美味しい空気……!前回、この曲のテーマは塩むすびのようだとお伝えしましたが、山頂で頬張る塩むすび、シンプルで一番旨いこの季節の醍醐味とも言える書き方、そこに徹底できるのがモーツァルトという天才なのです。くぅ~っ!食べたいなぁ!こんな旨いものはみんな大好きに決まっている!ところで、今回は調や楽器の特性からお伝えしましたが、実はモーツァルトには”演奏上の難しさ”がてんこ盛りにあります。これに触れたら二度と平穏には戻れないので、それはまた違う機会にお伝えしましょう。ご感想もお待ちしております。お問い合わせページからぜひお寄せくださいませ。

楽譜出典
Eine kleine Nachtmusik, K.525 (Mozart, Wolfgang Amadeus)(IMSLP)
※記事中の楽譜画像は解説のため一部を抜粋し、筆者が加工しています。

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クラ・うら・俱楽部~モーツァルトの場合②~

クラシックの裏側をコッソリ教えちゃう『クラ・うら・俱楽部』。前回からモーツァルトの難しさをコッソリ訴えております。「あなたが下手だから難しいんじゃ。」えっ、今更そんなこと言わないで!

さて、そのモーツァルトの難しさって具体的にどこがどう?と訊かれるとなんといってもギャップに尽きるなぁと思います。平和で幸福そうな曲調が多いから弾くほうもそうなんだと思われちゃう。でもさ、幸福そうな響きとか綺麗な音ってまず何から始まるかというと”ちゃんと楽器が鳴る”なんですよね。歌であっても喉という楽器を鳴らすこと。ここが始まりです。で、楽器を鳴らすというのは大きな音を出すということでもあって、この大きな音というのはある意味乱暴さとも近い場所にあるのです。ほら「怒鳴る」って大きな声ですよね。我々は子どもの頃から訓練を受けてきているので、乱暴さを排除して大きな音を出すことも徹底的に身につけています。そこはね、ヴァイオリンだったら弓のコントロールとか弓のコントロールとか弓のコントロールとか音程音程音程音程(良い音程だと楽器が鳴りやすいんですよ~)。

で、モーツァルトってこのコントロールがすごく繊細で、例えばチャイコフスキーの濃厚な「うぅぉをををを!!!」みたいな表現をしたあとだとやりにくい。なのでたいていのコンサートの曲順はこういったモーツァルトみたいな古典派からスタートして後半にチャイコフスキーのようなロマン派をもってきます。だってチャイコフスキーだったらむしろ乱暴さも味わいの一つだけどモーツァルトにはそれは似合わない。どんなに理不尽な流れでも弓は丁寧に余韻はほんわかほんわか即次の出だしはパシッと、あぁ~っ間に休符が欲しいよ~……あれ、これ地味に技巧的?ほら出番だよ、超絶技巧!!!

これはまるで彼の”ドギツイ内容をとってもチャーミングに愛らしくさぞかし美しくお皿に載せる天才でもあった”ってその人間性とギャップ。それはこんなテクニカルなところにまで反映されているような気がいたします。

そんなモーツァルトもユア・オーケストラで指揮してもらいたいから良かったらTシャツで応援してください!「クラシック黒作曲家シリーズ」1枚4,000円からです!このモーツァルトの画像からショップへリンクしています。

クラ・うら・俱楽部~モーツァルトの場合①~

長らくお待たせしました『クラ・うら・俱楽部』。初回はモーツァルトから始めることに致しました!ヴァイオリニストにとってモーツァルトと言えば鬼門。モーツァルトと言えば試験。「明るくて爽やかなイメージだよね♫」そう思われるように弾くことに命を賭けております。あぁ、でもモーツァルトにそんな必死さは似合わないんだ!2回に分けてお届けいたします。ググってもなかなか出てこない裏側をお楽しみください。

うん、モーツァルトはですね、難しい。もうこの一言に尽きます。きっとプロの方々でモーツァルトを簡単だと言う方はいないんじゃないかなぁ、超絶技巧というわけではないですけどね、でも超絶技巧が弾ける腕でないと弾けないような気がします。

で、この難しさをどうやったらお伝えできるか悶々と悩んでおったわけですが、あれです。

例えて言うなら丁寧に出汁をとった和食!あと女性で言えばナチュラルメイク!時間と手間がかかることで女性陣には有名ですね!あとパーマがいらないツヤツヤストレートヘアとか!こんなことを言うと、あの美しい響きになんて下世話な言い方するんだ、と叱られそうです。が、モーツァルト自身だって下世話お下品大好きだもんね、あの人ってドギツイ内容をとってもチャーミングに愛らしくさぞかし美しくお皿に載せる天才でもあったのです。もちろん全てがそうではないけど、その人間性を理解していないともうこのギャップには耐えられない……ここでは彼のお下品さを取り上げることは致しませんが(筆者の好みではない)、映画『アマデウス』には上手に描かれています。この映画、演奏も良いのでぜひご覧ください。ちなみに、筆者は出汁は昆布を水に浸けて終わりです。旨い和食は永遠にできない。残念なところで次回は11月26日配信です!

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お客様の声

2021年1月23日に開催したユアオーケストラコンサートの指揮体験コーナーにご参加下さった二人のお客様のご感想と演奏シーンをご紹介致します。

~2021年1月23日、広尾サロンでのYour Orchestraスタートアップコンサートに「参加」させていただきました。指揮もできるということで、少し勇んで足を運びました。実は、この日、別のコンサートを聴く予定だったのですが、ご縁を感じそちらをキャンセルして伺った次第です。 会場に着くとたちまち、9人の皆さんが奏でる豊饒な響きに心を奪われてしまいました。コロナ禍で、クラシックファンはコンサートホールに行けない「飢え渇き」があったため、生音を聴くことのよさを再認識していることと思います。つまりは、何かのコピーではなく、一回限りの芸術体験ということですね。今回、私はまさに「快」の体験をさせていただきました。 指揮のほうはご指摘のあったとおり、曲が進むにつれてテンポが遅くなってしまったようです(アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク第1楽章)。音こそ出しませんが、指揮はまさに「演奏」だと思い知りました。 このような試みのコンサートはユニークで有意義だと思いますので、これからもぜひお続けください。今日はありがとうございました。~

~本日は図らずも、J. S. BACH の不朽の名作で弦楽オーケストラの指揮初演の経験を賜り誠にありがとうございました。私は中学高校で吹奏楽を経験しており、上級生の時に指揮をやっておりましたが、その経験以来数十年ぶりの指揮でございました。事前にカラヤンのYoutubeで予習していましたが、フルコースはABABの形式でして、本日はA部分だけでしたが十分堪能させていただきました。この音楽は人生の最終局面での達観した雰囲気を持っていると思いますが、走馬灯の様に思いを巡らした後の静けさの処理がポイントでしょうか。最後に対旋律も無く最終音の簡素な和音をいかに静かに美しく終わらせる事が出来るかどうかが重要だと思っております。是非素晴らしい作品を世の中に普及させましょう。~

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