2021年1月4日。首都圏は、コロナ拡大を防ぐため政府による緊急事態宣言が発令されるかどうかという時。彼女は緊張感でお正月気分もどこかへ飛んでしまっていた。まずは方針を決めなければならない。それと、会場とも打ち合わせをしなければ。まだお正月で店舗は休みなのに、店長に連絡をするなんて申し訳ない。

そんな焦った気分の中、最低限方針を打ち出し関係者に連絡をし、なんとかホッとした数日後。

更なる出来事が襲い掛かった。

「大変なことになった」

彼からの電話だ。

「定期検査に来たら、緊急入院することになっちゃって」

これは作り話でもなんでもない。本当のことだ。

「来週の勉強会は欠席する。予定ではその数日後に出られるから」

指揮をする彼が、検査で病気が見つかったため入院することとなってしまった。コロナではないが、指揮のために彼女と行っていたピアノスタジオでの勉強会は参加できないという連絡だった。それで済めばいいが長引く可能性もあるという。延期?どうする?様々な考えが一瞬にして頭をよぎった。

「来週13日には連絡できる。結果が出る」

「そこで延期か中止か決めましょう」

そこからは1月4日の比じゃない緊張感が続く日々だった。オケのメンバーを始めとして会場や関係者にそれぞれ事情を説明し、そこからは眠れない夜が続く。その後、幾度か状況報告の連絡があり15日にあった連絡で決行するということで決まった。退院できるという彼の喜びの声と、そしてそれをオケのメンバーに伝えたときの反応といったらなかった。

(みな、心してこの演奏会を待ち望んでくれている)

コロナにより、あらゆる演奏会が影響を受けている中でのこの企画。参加してくれるメンバーたちだって、並々ならぬ思いを持って臨もうとしてくれているのだ。

やっと安心して、その夜はぐっすりと眠れたはずなのに。

翌朝の着信履歴。嫌な予感。

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